ルールってなんだ? : WTOって何だろう ~ 公正な貿易 ~

最終更新: 2019年11月28日

日々ニュースを見ていても、出てくるWTO。WTOとは、世界貿易機関 World Trade Organization です。



加盟国が「契約上の義務」を負う唯一の国際組織、とも言われます。それは、国連、世界銀行、IMF等のその他の組織は、「最大級の努力を促す」だけだからです。


1995年1月1日に誕生したWTO。設立後25年が経過しようとしています。

米国が主体となって作り上げてきた、この世界の貿易を管理する仕組み。


多国間の貿易における公正性を担保するために出来た機関ですが、今やロシアや中国を含め、164か国が批准する組織になり、国際公共財の性質も帯びています。


特徴は、一国一票の原則。また、通商の紛争を解決する、裁判所のような役割も持った、加盟国が主体的に運営する国際機関です。


それを、今、米国が率先して2国間交渉に戻そうとして、解体?(改革?)しようとしているかのようにも見えます。米中貿易戦争、とも言われる現在、国際通商のルール作りはいったいどうなっているのでしょう?


とはいえ、WTOの全体は、残念ながらぱっと把握できるようなものではありません。

そこは、貿易のもめ事を減らすために、人類が考えてきた知恵と汗と涙の歴史。この記事では、色々な切り口から切り取って、全体像をとらえられれば、と思います。


今回は、「公正な貿易」。まずはWTOにかかる昨今のトレンドを読み解きましょう!



◆公正な貿易とは


トランプ大統領が、選挙中に言っていた言葉が印象的でした。

「大切なのは、自由な貿易ではなく、公正な貿易である」と。

でも、いったい何が公正な貿易なのかは、言及がありませんでした。


その後、トランプ大統領は2018年のダボス会議での演説にて、「米国は、自由貿易を支持するが、それは同時に、公正かつ互恵的な貿易でなければならない」と述べました。その後も、互恵的という言葉が良く出てきます。


米国は、中国から多くを輸入しています。結果、中国は米国にとって最大の貿易赤字国です。2018年の米国の8,913億ドルの貿易赤字のうち最大の国が中国の4,192億ドルで、過去最高の赤字額でした。この時にも互恵的、という言葉を使いました。貿易赤字の大きな日本や韓国に対しても使いますね。

※ 貿易赤字の拡大は、トランプ大統領の減税効果による米内需拡大も寄与しています。


そもそもは、国際貿易における「公正」とは、WTOの基本原則や規律に基づくルールを守るという「ルール指向型」で担保されるべきものでした。


しかし、その後の米国の主張からは、公正な貿易の条件は、「結果志向型」で満たされるべき、という主張をしているという印象を受けます。


つまり、機会の平等を結果の平等より優先するポリシーの米国が、こと貿易に関しては、機会の平等より結果の平等を重視するんだ!と言っているという事ですね。社会主義的です。

で、これを米国の社会が一定以上支持している。これが注目すべき点だと思います。


また、米国は中国を「不透明な国内規制措置により不公正な競争を米国企業や労働者に強いる」として、市場経済国としては認めませんでした。WTO協定とは別の、アンチダンピングをちらつかせるアグレッシブな二国間協定を元に中国の市場開放を迫っています。これが、米中貿易戦争と言われる事態となっています。


加えて、EUを離脱しようとする英国には、「EU離脱を成功させるために、貿易協定をすぐに締結する用意がある」と言っています。


米国の、多国間協定を、二国間協定にし、個別交渉という方針は明確です。



◆公正な貿易をするためのWTO


さて、これだけ「公正」の定義がぶれてしまうと、公正な貿易を実現するためのWTOもどうして良いか困りますね。逆に言えば、米国主導で作ってきた世界の通商ルールを、トランプ大統領は全く重視していないという事になります。ただ、米国議会はその歴史を重んじますので、トランプ大統領が一人でWTOを無視すると決めることはできないでしょう。


そして、米国だけではありません。アンチグローバリズムは、世界各国で人気を博しています。「グローバル経済は、エリートや強国に有利に働くから、そんな経済は庶民の敵だ」という漠然とした思いが人の感情や意識を刺激するからだと思われます。

私は、これは、21世紀型の特徴になるのでは、と思います。


既に、欧州をはじめとして、国際協調の枠組みを敬遠し、主権国家を前面に押し出した政策の政党が一定の人気を博しています。彼らは共通して、移民やグローバル資本を目の敵にしています。


個人の自由ではなく、集団の利益を優先する公的介入や、規制を歓迎する集産主義が受け入れられる風潮は世界でも、この日本においても強くなってきていると感じます。

そして、自由主義経済と、この集産主義が「労働」「環境」「格差」といったエリアで最も先鋭的に対立してきています。


少なくとも、WTOは今までの姿のままではその目的を達成することが難しくなっていくのでしょう。


私自身は、日本は、欧州と協調しつつ、分散的に国際協調の枠組みに貢献し、より安定した世界秩序を目指すべきと考えますが、AIやIoT時代に対応するWTOの進化は必須だと考えています。ブロックチェーンまで組み込めると素晴らしいですね。


中央集権の時代が終わり、分散型の時代になっていく。これは世界のトレンドです。国際機関は、中央集権の象徴のようなところもあります。でも、国家の場合は分散型と言えど、国家単位で国力も全然異なります。二国間交渉が主流だと、大国のわがままが通りやすくなります。ジャイアンのような国家に歯止めをかけるためにも、国際公共財として、こういう機関は必要だと思うのです。WTOの分散型時代に対応した進化が求められるのでしょう。


大国の土俵で米中や欧州と戦っても厳しい交渉が待っていますからね!



参考文献:

超不確実性時代のWTO 深作喜一郎著

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